カード印刷方式とカード素材
カード印刷技術
GRASYS IDカードプリンタのカード印刷技術は1.ダイレクト昇華転写印刷、2.熱溶融転写の2つの方式が使用されています。

左図はUV(蛍光)パネル付きのYMCKFOリボンの場合のインクリボンの印刷順です。
Y/M/Cは昇華転写方式でがカラー印刷に使用され、K/F/O(黒・UV・オーバーレイ(保護層))は熱溶融転写方式で印刷されます。
1.ダイレクト昇華転写印刷
カラーの印刷で使用しています。インクリボンのカラー部分はYMCの3原色が用いられています。
カード印刷時は加熱用のサーマルヘッドとカードの間にインクリボンがあり、サーマルヘッドで加熱されたリボンの染料が気化して細かな微粒子となってカードの表面に浸透します。インクの固定、表面保護のためのオーバーレイ(保護層)を併用します。
特徴
粒子が細かなため階調表現が可能、画像などの印刷に向いています。
黒を表現するとコンポジットブラック(カラー合成の黒)になるため文字やバーコードなどの表現にはもう一つの印刷技術である熱溶融転写でKインクを使用しています。
ダイレクト昇華転写とカード素材
ダイレクト昇華転写印刷に向いているカードはPVCカード、受容層付きカード、コンポジットPVCカードです。
※説明上、下図ではインクリボンとカードが離れていますが実際には密着しています。

●PVCカード
PVCカードには微細な穴があるためサーマルヘッドの熱によって気化したインク粒子が入り込み易くなっています。
PVC素材の誤解
過去、PVC素材は不適切な条件で焼却するとダイオキシンが発生することで問題視されていた時期がありました。現在は焼却設備の燃焼方式が効率化されており、ダイオキシンの発生レベルは一般的なレベルになっているため問題視されていません。

●受容層付きPET-Gカード
カード表面の受容層がインクを受け付けやすいためサーマルヘッドの熱によって気化したインク粒子が入り込み易くなっています。
受容層付きのカードはインクの粒子が受容層に入り込む量がPVC素材と異なるため、印刷時に濃度が高くなる傾向がありますのでテスト印刷で濃度の調整を実施する必要があります。

●コンポジットPVCカード
丈夫なPET-G素材をPVCでサンドイッチしている構造のため表面のPVC層に気化したインク粒子が入り込み易く、印刷品質はPVCカードと同等です。

●PET素材カード
PET素材にはインクが入り込まないため、印刷ムラや印刷されない状態が発生します。
GRASYSカードプリンターでは非推奨のカードです。
2.熱溶融転写印刷
樹脂にインク染料を混ぜたものをサーマルヘッドの熱で溶かし、カードに溶着させることで印刷します。

インク粒子の入った樹脂ごとカードに溶着するため、諧調を表現することはできません。単色の文字やバーコードの印刷に向いています。
単色インクリボンはK(黒)の他に金・銀・赤・スクラッチカード用などが用意されています。
単色インクのみ使用の場合、樹脂インクのため保護層のオーバーレイは必要ありません。
表面がPET系素材のカードの場合、樹脂インクが溶着されない場合があります。PVCまたは受容層付きのカードを使用してください。
インクリボンの種類
カードのデザインに合ったインクリボンを選択しましょう。
- カードの半分〜幅いっぱいにカラーデザインが入っている場合
YMCKOリボン(片面または両面カラー)・YMCKOKリボン(片面カラー/裏面黒) - カードのカラー部分が半分以下の場合
カラー用のYMCが半分サイズのhYMCKOリボン(片面または両面カラー) - カードにカラー部分なしの場合
単色Kリボンまたは保護層付きのKOリボン - スクラッチカード
スクラッチ用リボン、印刷後のカードにスクラッチ層を重ねて印刷 - UVインク付きYMCKFOリボン
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